2015年8月11日火曜日

YO-YO MA / SOLO (1999)

パリ出身で中国系アメリカ人の世界的チェリストヨーヨー・マ(馬友友)のCDを初めて買った。というのも、そこに250円であったから。これは聴いてあげないともったいない。1999年にソニーより発売された、チェロ独奏のための曲を集めたアルバム。クラシックのスターは非クラシック活動をすると人気を下げるが、このワールドミュージック的企画アルバムはあまり評価されてない気がする。

ジャケットは京都龍安寺の石庭をバックにヨーヨーがチェロを弾いている。自分は一度この場所を訪れているのだが、なにぶん高校生のときなので何も印象に残っていない。何も寺社仏閣に関心のない高校生をバスで寺から寺へ運んでも何も役に立たない典型だった。

ゾルタン・コダーイ(1882-1967)の無伴奏チェロ・ソナタ作品8はヨーヨーの言葉によると、「バッハの組曲以来、コダーイほどチェロの限界を大きく広げた作曲家はいない」んだそうだ。1915年に作曲された、ハンガリー民族音楽の要素と、半音下げ調弦スコルダトゥーラを用いる難曲として知られる、チェロ奏者にとって最大の難関とも言える曲。自分はこれまでシュタルケル以外の録音を聴いた事がなかったことが、このアルバムを手に取った理由。テクニックのすごさに圧倒される。インターナショナルな活動をしてきたヨーヨーならではのスタイリッシュさ。ただ、こういう曲はローカル色を出した素朴な演奏のほうが好まれる傾向がこの国では高い。自分はコダーイのこの傑作を充分楽しませてもらった。

90年代初め、かつての冬季オリンピック開催地サラエヴォで地獄のような市街戦が繰り広げられた。かつて異なる民族同士が社会主義体制の下、同じ街で平和に暮らしていたのだが、やがて近隣住民の間で民族浄化の殺し合いが始まった。デイヴィド・ワイルド(1935- )英国のピアニスト・作曲家で教師が、サラエヴォで追悼のため毎日決まった時間決まった場所で演奏を続けるチェロ奏者にインスパイアされて作った曲「サラエヴォのチェリスト」。自分はかつてこういう曲を聴かなかった。歴史の評価を経ていない話題先行の曲だと。今回しっかり耳を傾けた。朗々とした節回しのエレジー。

アレクサンドル・チェレプニン(1899-1977)は相当なクラシック通しか知らない作曲家だと思う。BISぐらいにしか録音が見当たらない。サンクトペテルブルクに生まれ、グルジア、パリ、中国、日本と旅をした作曲家で、日本では伊福部昭が短期間師事したことでも知られる。無伴奏チェロ組曲(1946)は6分半ほどの曲。中国的な5音音階を聴き取ることができる。なお、ヨーヨーの父、ハオツェン・マはパリでアレクサンドルに、ヨーヨーはその息子イヴァンにハーバードで音楽理論を学んでいる。

ブライト・シェン(盛宗亮1955- )は上海出身の中国系アメリカ人作曲家。文革時代は青海省の農村で過ごしたらしい。この人のオーケストラ作品の録音はNAXOSにもある。「中国で聞いた7つの歌」は7曲からなる19分ほどの中国、チベットの音楽による組曲。

アメリカ南部の音楽は18世紀以降英国から渡ったものだが、その後どうやって今のフィドル、カントリーといった音楽になったのか自分はさっぱり分からない。オコーナー「アパラチア・ワルツ」だけはこのアルバムで異質だ。

こんなCDが250円で売られている社会って……、まあ、豊かなんだろうな。

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