このCDは280円でそこにあったので買った。EMIのTESTAMENTシリーズによる1956年1958年という古いブラームスのヴァイオリン・ソナタの録音。自分の持ってるブラームスのヴァイオリン・ソナタのCDはこれが唯一。
ジョコンダ・デ・ヴィート?申し訳ないがまったく存じ上げないヴァイオリニストだ。だが、ピアニストがエトヴィン・フィッシャーだった。このピアニストはクラシック音楽にある程度精通した人なら誰でもが知ってる巨匠。フルトヴェングラーとの共演したり、バッハの録音でも有名。
CDを聴きながら解説書を読む。
ジョコンダ・デ・ヴィートは1907年、イタリアのかかとに位置するワインの産地マルティナ・フランカのぶどう農園に生まれる。いとこが音楽一家だったために早くからヴァイオリンと出会い、ローマ・サンタ・チェチーリア音楽院で学び、1932年にはウィーンのコンクールで国際キャリアをスタート。バーリとローマで教職と演奏活動を開始。
アマチュアのヴァイオリン奏者でもあったムッソリーニからストラディヴァリを贈られそうになるのだが、母親に「男性から高価なものをもらってはいけない」とたしなめられる。ヴィートはイタリア政府から貸与されたストラディヴァリを使ったこともあったのだが、「ヴァイオリンの価値は価格や作者の名声とは無関係」という信念を持っていたという。
1953年にはヴァチカンでローマ法王ピウス12世の御前においてブラームスのソナタをフルトヴェングラーのピアノで演奏。
英国の市民権を得た後は巨匠たちと共演。1958年にはチャイコフスキー国際コンクールの審査委員を務める。1961年に引退。惜しいことにこの人はキャリアの中で得意のベートーヴェンのコンチェルトを録音しなかったという。
1988年に夫を亡くすまでハートフォードシャーで幸せな引退生活を送る。ごくまれにロンドンまでコンサートを聴きに出かけていたという。1994年にローマで死去。
古い録音だと音程が安定しなくて聴きづらいのだが、この録音は1950年代中ごろにしてもかなり良い。老巨匠E.フィッシャーのピアノをこれほど良い音質で聴いたのは自分は初めて。
よく読まないと見過ごすが、第2番だけは友人だったティト・アプレアのピアノ伴奏。
いかにも時代的なヘタウマ演奏かな…とも最初は思ったけど、わりと普通に聴ける。それどころか聴き終わったあとの満足度が高い。ヴァイオリンの巨匠だったことがびんびん伝わってくる。
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